革と漆。

革と、漆。
どちらも、人の暮らしの中で長い時間使われてきた素材です。
けれど、その二つが重なった姿を目にする機会は、決して多くありません。
Hasが取り組んでいるものづくりのひとつに、
「漆皮(しっぴ)」
があります。
革の表面に漆を施す、古くから伝わる技法です。
その歴史は古く、日本では武具や装飾品などにも用いられてきました。
革のしなやかさと、漆が生み出す独特の艶や質感。
異なる性質を持つ二つの素材が重なることで、革だけでも、漆だけでも生まれない表情が現れます。
日髙聡生が漆皮に取り組み始めたきっかけは、既に確立された技法をそのまま再現するためではありませんでした。
「人がやらない事をやってみたい。」
そんな思いから漆皮に興味を持ち、自ら調べ、試しながら研究を始めたといいます。
Hasでは専門の漆職人に製作を委ねるのではなく、日髙自身が漆について学び、試作を繰り返してきました。
しかし、漆を革に塗れば、それだけで革製品として使えるわけではありません。
漆は硬化すると、独特の強さを持ちます。
一方、鞄や財布に使う革には、曲がること、しなること、そして日常の動きに耐えることが求められます。
漆の美しさを残しながら、革の柔軟性も失わない。
そのバランスを探る必要がありました。
塗る。
乾かす。
また塗る。
そして、確かめる。
Hasでは漆を一度塗って終わりにするのではなく、工程を重ねながら仕上げていきます。
公式サイトでは、製品に合わせて漆を4〜5工程ほど塗り重ねることが紹介されています。
ただ厚く塗ればいいわけではありません。
革製品として必要なしなやかさを残しながら、漆ならではの表情を引き出していく。
そこには、何度も試してきた時間があります。
そして出来上がった漆皮には、不思議な表情があります。
光を受けたときに現れる、深い艶。
均一ではない、わずかな揺らぎ。
革の柔らかな表情の上に、漆がつくる奥行きが重なる。
伝統的な素材でありながら、その佇まいはどこか現代的です。
Hasが目指しているのは、昔のものをそのまま再現することではありません。
受け継がれてきた素材や技法を見つめながら、
「今、自分ならどう形にするか。」
を考えること。
革職人として培ってきた技術。
一枚の革を見る感覚。
そして、独学で向き合った漆。
それらが重なって、Hasの漆皮が生まれています。
革と漆。
二つの素材が出会うまでには、完成した製品からは見えない、長い試行錯誤があります。
伝統をそのまま残すのではなく、自らの手でもう一度向き合い、現代の暮らしの中で使えるものへ。
Hasの漆皮には、日髙聡生という職人の探究心が静かに宿っています。

