身に纏うように。|IKUMAが「Vesto」に込めたもの

鞄は、ただ物を運ぶための道具ではない。
毎日のように手に取り、身体に触れ、使う人とともに時間を重ねていくもの。
IKUMAがものづくりで大切にしているのは、“使いやすいこと、丈夫であること、そして美しいこと。”
装飾をできる限り排し、上質な素材を丁寧に仕立てる。そして、長く使うことで生まれる革の変化まで含めて、一つのプロダクトを考えています。
そんなIKUMAの思想が、ひとつの形になったボディバッグが「Vesto(ヴェスト)」です。
自転車に乗ることから、始まった。
Vestoの原点は、作り手自身の暮らしの中にありました。
自転車で移動する機会が増え、一般的なショルダーバッグでは身体のまわりで動いてしまう。
そこでボディバッグを使い始め、その便利さを実感する一方で、「革で、自分が使いたいと思えるものをつくれないか」と考えたことから試作が始まります。
目指したのは、身体に自然と寄り添いながら、カジュアルになりすぎないボディバッグ。
試作を重ねて生まれた名前は「Vesto」。
ポルトガル語で「着る」「身につける」を意味する“Vestir”に由来しています。
金具を見せないという、美しさ。
Vestoを見たとき、まず感じるのはその静かな佇まいです。
その背景には、“「できる限り金具を見せない」”という明確な考えがあります。
ファスナーの存在感を抑えるために採用されたのが、「玉縁(たまぶち)」という仕立て。
革を薄く漉き、折り、形を整え、縫製する。
一見すると小さなディテールですが、この玉縁によってファスナーが主張せず、ミネルバ・ボックスの豊かな表情がより際立ちます。
そして、この仕立てにはもう一つの理由があります。
柔らかなミネルバ・ボックスに対して、張りを持たせた玉縁が「芯」のような役割を果たし、バッグの型崩れを抑えてくれるのです。
美しく見せることと、長く使えること。
IKUMAのものづくりでは、その二つが切り離されていません。
素材が変われば、設計も変える。
内装には、イタリア・リモンタ社のナイロンを使用しています。
上品な光沢があり、耐久性にも優れた素材です。
しかし、滑りが良いからこそ、バッグの中で収納物が動きやすくなる。
そこで、従来のフリーポケットに加えて、縦型のポケットを2か所設けました。
そのうち片側には約2.5cmのマチを持たせ、キーケースなど厚みのあるものも収めやすくしています。
素材を選んで終わるのではなく、**その素材の性質に合わせて使い勝手まで設計し直す。**
目立たない部分にこそ、作り手の考え方が表れています。
長く使うために、見えないところまで。
ショルダーストラップも、Vestoを象徴するディテールのひとつです。
表と裏の両面にミネルバ・ボックスを使用し、革の中でも丈夫な部位を選んで裁断。
さらに、長く使うことで生じる伸びを抑えるため、内部には伸び止めを施しています。
コバは、ヤスリで滑らかに整えて磨き上げる「切り目本磨き」。
こうした工程の一つひとつは、完成した姿だけを見れば気づかないかもしれません。
それでも手を掛ける。
長く使われることを前提にものをつくるIKUMAだからこその仕立てです。
使う人の時間とともに。
外装に使われているのは、イタリア・バダラッシ・カルロ社の「ミネルバ・ボックス」。
使い始めたその日が完成ではありません。
触れる。
持ち歩く。
身体に馴染む。
そうして時間を重ねるほど艶が増し、色が深まり、革の表情は少しずつ変わっていきます。
IKUMAが革製品に見出しているのは、機能だけではありません。
使い続けることで生まれる、ぬくもりや愛着。
いつしか「自分のもの」になっていく感覚。
“身に纏うように使い、時間とともに育てていく。”
Vestoには、IKUMAが大切にするものづくりの考え方が、静かに詰め込まれています。


