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革製品を選ぶとき、私たちは何を基準にしているでしょうか。
革の種類、使いやすさ、収納力、価格、ブランド名。
どれも大切な要素です。
けれど、ときどき理屈では説明できない出会いがあります。
「なんだろう、この形。」
ただそれだけで足を止め、思わず手に取りたくなるもの。
そんな不思議な魅力を持つブランドが、**colm(コルム)**です。
初めて作品を目にすると、まず感じるのは美しさです。
派手な装飾があるわけではありません。
目を引くロゴがあるわけでもありません。
それでも、不思議と視線が留まり、何度も眺めたくなる。
その理由は、革そのものではなく、「形」にあります。
colmは革製品をつくるブランドというよりも、革という素材で立体をデザインするブランドなのです。

美しいものには、理由がある。
美しいものには、理由がある。

世の中には、シンプルな革製品が数多くあります。
けれど、シンプルだからこそ違いが現れるのが「形」です。
colmの作品は、角がやわらかく、自然な曲線を描いています。
継ぎ目は驚くほど少なく、どこから眺めても美しい。
革でできているのに、どこか木工品や陶器のような静かな存在感があります。
この曲線は、見た目を美しくするためだけのものではありません。
手のひらに収めたときの握りやすさ。
バッグから取り出したときの佇まい。
机の上に置いたときの美しさ。
何気ない日常の動作まで心地よくなるよう、一つひとつ丁寧に考えられています。
使いやすいから好きになるのではなく、
好きだから、毎日使いたくなる。
colmの作品には、そんな魅力があります。


伝統を、未来のデザインへ。

colmの作品を眺めていると、一つの疑問が浮かびます。
「どうして、こんな形が作れるのだろう。」
その答えが、日本に古くから伝わる革絞りという技法です。
一般的な革製品は、平らな革を裁断し、縫い合わせながら立体を作ります。
一方、革絞りは、一枚の革に熱と圧力を加え、革そのものを立体へと変えていきます。
だから、継ぎ目が少なく、自然な丸みが生まれる。
だから、触れた瞬間に「何かが違う」と感じるのです。
この技法は、高い技術と時間を必要とするため、大量生産には向いていません。
それでもcolmは、この伝統技法に新しい可能性を見出しました。
古い技術を守ることが目的ではありません。
伝統を、今の暮らしの中で美しく生かすこと。
その考え方が、作品の一つひとつに息づいています。



革職人ではなく、プロダクトデザイナーだから生まれた発想。
colmを手掛ける成田吉宣氏は、もともとプロダクトデザイナーとして工業製品やパッケージデザインなどを手掛けてきました。
だから、ものづくりの出発点が少し違います。
「どう縫うか」ではなく、
「どんな形が、人の心を動かすのか。」
まず立体を考え、その形を3D CADで設計する。
精密な型を製作し、その型を使って革を立体へと成形していく。
そこに革絞りという伝統技法が重なることで、colmだけの美しいフォルムが生まれます。
伝統と最新技術。
職人の手仕事とデジタル設計。
異なるもの同士が自然につながり、新しい価値を生み出しているのです。
だからcolmの作品は、革製品でありながら、どこかプロダクトアートのような空気をまとっています。

シンプルほど、難しい。
シンプルほど、難しい。

装飾が少ないものほど、ごまかしはききません。
ほんの数ミリの厚み。
わずかな曲線の違い。
手に触れたときの感覚。
そのすべてが、作品全体の印象を左右します。
だから、何度も試作を繰り返し、少しずつ理想の形へと近づけていく。
目立たない部分にこそ時間をかける。
そんな積み重ねがあるからこそ、完成した作品には静かな美しさがあります。
使い始めたその日だけではなく、何年先も「いい形だな」と思える。
それこそが、本当にシンプルなデザインなのかもしれません。



時間が、美しさを育てていく。
colmで使われる植物タンニンなめしの革は、使い込むほどに色が深くなり、艶が増していきます。
小さな傷も、その人だけの表情になっていく。
さらに、立体的に成形された革は、少しずつ手に馴染み、持ち心地まで変化していきます。
新品が完成ではありません。
日々使い、時間を重ねることで、本当の意味で完成していく。
それが革製品ならではの魅力であり、colmが大切にしている価値でもあります。
だから、手放す理由よりも、使い続ける理由が増えていく。
それもまた、このブランドが長く愛される理由なのでしょう。



形には、つくり手の思想が表れる。
良いデザインとは、目立つことではありません。
毎日使っても飽きないこと。
何年経っても美しいと思えること。
そして、使う人の暮らしに自然と溶け込むこと。
colmの作品を見ていると、そんな考え方が静かに伝わってきます。
大量につくることより、一つを丁寧につくること。
流行を追いかけることより、長く愛される形を磨き続けること。
その積み重ねが、ブランドの個性となり、作品の魅力となっています。


革は、ここまで美しく形になれる。
革製品は、毎日使う道具です。
だからこそ、機能だけではなく、「好きでいられること」も大切なのだと思います。
バッグから取り出したとき。
机の上に置いたとき。
何気なく手に取ったとき。
そのたびに、「やっぱり、この形が好きだ」と思える。
そんな気持ちは、数字やスペックでは測ることができません。
colmの作品は、革製品という枠を少しだけ超えて、「暮らしの中で育てていくデザイン」なのかもしれません。
使うための道具でありながら、思わず眺めたくなる。
そして、年月を重ねるほどに愛着が深まっていく。
革という素材には、まだ知られていない美しさがあります。
colmは、その可能性を静かに、そして誠実に形にし続けているブランドです。