⑮カーフについて・フランス編(その1)

今回は子牛の革であるカーフ・レザーについてです。
カーフは「生後6か月以内の子牛の革」、キップは「生後6か月〜2年未満の革」、そしてステアは……等々。革に関する説明文を目にするときに度々出てくるこれらの細やかな分類。
カーフは「生後6か月以内の子牛の革」、キップは「生後6か月〜2年未満の革」、そしてステアは……等々。革に関する説明文を目にするときに度々出てくるこれらの細やかな分類。
実はこうした厳密なカテゴリー分けは日本特有のものだったりします。
海外での分類はもっと大雑把な感じで、「子牛か、成牛か」という二択が一般的です。
ヨーロッパでは、カーフ・スキンといえば「生後6〜8か月程度」とされることが多いものの、あくまで「程度」という言葉の通り、「概ねそのくらいならカーフ」という大らかな認識のようです。
その解釈すらタンナーによって様々で、有名どころでいえばドイツ・ペリンガー社の「シュランケンカーフ」なども、日本でイメージする子牛のサイズを軽く超えて、一枚革は大きな面積だったりすることが多いです。
(もしかすると、肌理が細かく小ぶりで極上なカーフは、世界のトップブランドが買い占めているのかもしれませんね)
実際のところ、革を科学的に調べたところで「生後7か月か、9か月か」を判別できる技術は現代にはありません。
後述しますが、出生から屠殺、原皮の行方に至る記録=トレーサビリティを追える人でない限り、厳密な月数など誰にも分からないのが現状です。
11DROPSではヨーロッパのカーフを多く使用していますが、上記のことからカーフとは「厳密に生後6か月以内の子牛の革」ということではなく、「概ね子牛の革」とアバウトに思っていただいた方がよろしいかと思います。
11DROPSではヨーロッパのカーフを多く使用していますが、上記のことからカーフとは「厳密に生後6か月以内の子牛の革」ということではなく、「概ね子牛の革」とアバウトに思っていただいた方がよろしいかと思います。
さて、そんなカーフの中でも、今回触れたいのがフランス産についてです。
アース社(Tanneries Haas)やデュ・プイ社(Tanneries Du Puy)、レミー・キャリアット社(Rémy Carriat)といったフランスの名門タンナーは、なぜ世界のハイ・ブランドからこれほど信頼を寄せられているのでしょうか。
私見ですが、その理由としては①原皮の質、そして②発色の美しさ、③途方もないカラーバリエーションの豊富さ、の3つの要素にあると考えています。
それでは一つひとつ詳しく書いていきたいと思います。
まずは原皮のクオリティについてですが、この原皮の美しさを支えているのが、ズバリ、牛が育つ環境です。
アース社ではフランス国内およびヨーロッパの農場で育てられた牛を使っているのですが、その品質管理の徹底具合にまず驚かされます。
これらはタンナーだけでの取り組みではなく、「どのような寝床(床材)で育てれば皮に傷がつかないか」「どんな衛生管理を行えば皮膚病を防げるか」を畜産農家、獣医師、育成技術者、 統合事業者間で情報をフィードバックし合い、畜産業界全体で原皮のクオリティを高める取り組みを何十年も続けているそうです。
単に市場から皮を買い付けている訳ではなく、生産現場まで遡って原皮の品質管理を行い、牛の皮膚に寄生虫や傷(放牧時の有刺鉄線などによる傷)がつかないよう、育成環境や衛生管理に関して農家や獣医師と直接協働したトレーサビリティが行われていることが同社の公式ステートメントで裏付けられています。
一方、デュ・プイ社ではアルプス地域の牛を、レミー・キャリアット社はバスク地方・ピレネー山脈周辺の農場の牛を使用しているそうです。
どんな革でも、スムース革を1枚大きく広げてみれば、生前の擦り傷や虫刺されの跡が結構残っているのが普通です。
しかし、寒冷な気候の高地では皮膚を傷つけるハエやダニなどの害虫がほとんど発生しませんし、さらに有刺鉄線を使わない広大な牧場でストレスなく育つため、虫刺されも傷も少ない、綺麗な状態のギン面(表面)に仕上がるという仕組みです。
どんな革でも、スムース革を1枚大きく広げてみれば、生前の擦り傷や虫刺されの跡が結構残っているのが普通です。
しかし、寒冷な気候の高地では皮膚を傷つけるハエやダニなどの害虫がほとんど発生しませんし、さらに有刺鉄線を使わない広大な牧場でストレスなく育つため、虫刺されも傷も少ない、綺麗な状態のギン面(表面)に仕上がるという仕組みです。
アース社とは方法こそ異なりますが、どちらも上質な原皮を得るための手間やコストを惜しまず、より最上の環境で牛を育てていることが伺えます。
とは言え忘れてはならないのは、これらの革がすべてヨーロッパの食肉文化の副産物であり、大切に受け継がれた「命の証」だということです。皮を摂るために育てられているのではなく、子牛を食べる文化があるからこそ、副産物として上質な皮が生まれている訳です。
先程カーフの定義はヨーロッパでは大雑把と書きましたが、面白いのはフランスでは生後3ヶ月〜6ヶ月未満(ミルクのみで育った乳飲子牛/ Veau)の「ベビーカーフ」に限っては、明確に「カーフ」とは区別しているという点です。
ベビーカーフはカーフの中でも最高級のカーフとして高値で取引されているためです。
フランスの畜産業界は、1頭ごとの個体識別番号によるトレーサビリティ=追跡可能性システムが世界で最も発達している国の一つと言われていますので、アース社同様に、デュ・プイ社の革もレミーキャリアット社の革も、出生日から屠札された日・原皮が入荷された日まで、その気になれば追跡できるということになります。
凄い話ですね。
そしてタンナーの元へ渡った原皮は、フランスの職人が注ぐ情熱と伝統の鞣し技術によって、ただの原皮から上質なレザーへと昇華されていきます。
(その2に続きます)














